江戸グルメと酒と旅の話

旅行ライターやってます。昼飲み、ご当地グルメ、江戸グルメ・老舗、神社仏閣、旅の記録などをつづっています。

まったりお酒が飲める、四谷三丁目の老舗トンカツ屋

今週末はとある店にカツ丼を食べに行きたいという彼氏からのメールに、わたしは、悩んでいた。

カツ丼……。

ぜんぜん惹かれない。

わたしは思う。たぶん世の中の9割の女性はカツ丼という食べものに興味はないじゃないかと。

同僚でも友達でも、カツ丼食べに行こうとか、カツ丼を食べたいとかまわりの女性から聞いたことないし、メニューに「カツ丼」の文字があったとしても、それをチョイスしている女子をわたしはみたことがない。「カツ丼」の単語を女子からほぼ聞いたことはなく、女子にとって「カツ丼」という食べ物への興味は著しく低い。

だいたい、女性にとって、丼もの、ってだけで、ごはんが多い、かき込んで食べなきゃいけないイメージで落ち着かないし、ちょっとずついろいろ食べたい欲が満たされない、などの理由で、忙しい昼食などならまだしも、夕食としては若干マイナス。

そして、トンカツでさえ、そのカロリーやボリュームに食べるのをはばかられる。それなのに、カツ丼は、カツが丼ごはんの上にのって、さらに卵やら甘い出汁やらが加わるのだ……、考えただけで卒倒しそう、というのが正直なところ。

つまり、ボリュームがありすぎて食べきれない、こってり味が濃くて重い、ほぼ1日分のカロリーを丼ぶり一杯で摂取することになることに対しての不安感、ゆっくり食事できなさそう、などの理由により、カツ丼は多くの女子の脳みそにその存在をほとんど認知されていないのだ(と思う)。

唯一わたしがカツ丼を食べるときといえば、母の手作りのカツ丼と、スーパーで売っているミニサイズのカツ丼のみで、家でゆっくりと、食べたい量だけ食べることができるという安心感のもとでしか、わたしはカツ丼を食べたことがない。

しかも、土曜の夜はゆっくりお酒を飲みたいことあり、どんぶりものだなんて……としぶっていた。が、店にはお酒やつまみもあるし、トンカツもあるよ、ということだったので、渋々了解し、足を運ぶことになったのが、四谷三丁目にある「鈴新」。創業1958年のトンカツ屋だ。

彼がテレビで見て行きたいと興味をもったとのことだったが、メディアにはよくとり上げられている店のようだ。 

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店に着くと、外観は、こぎれいな居酒屋のような趣で、ちゃっと食べてちゃっと出なきゃ、みたいな丼ぶり屋さんのイメージはなく、一安心。ビルの上には、店主のお顔とおぼしき看板が個性を放っており、店への好奇心を駆り立てられた。

店内は、コの字型のカウンター席のみでちょっとした小料理屋のようだ。木のぬくもりがあるあたたかみのある雰囲気。あれっ!?結構いい感じかも。

厨房の前にカンターがあり、中がよく見渡せるようになっている。厨房では男性が鍋を握っており、香ばしいいい匂いが立ち込めている。

正面にはきれいに重ねられた食器類が並んでいる。店では、看板のお顔だと一目でわかる大将と、その奥さんが接客してくれる。調理をしているのは若い男性だった。息子さんなのかしら。

お客は親子3人組。ひと席あけて彼らの横に腰をかけた。あれれ、落ち着くぞ……。お酒も、ビール、日本酒、焼酎がそろっていて、肴も種類は多くないけど、ママカリの酢漬け、とか、トマトのフライとか、真いかの丸干しなど魅力的。

さっそく瓶ビールで乾杯。わたしは平日はほとんど飲まないので、この土曜日の乾杯のビールのおいしいことおいしいこと。ふー。幸せ。ほっとする。お通しは厚揚げの煮物。やさしい味わいで、カツ丼もおいしそうだと思った。着々とこの店が好きになっていく。

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土曜ということもあり、お客はひっきりなしにやってくるものの、満席にまではならず。ゆっくりお酒を飲めるのがうれしい。ビールをもう1本、そしてママカリの酢漬けをオーダー。うん、ママカリ、シンプルな味わいだけど、身がきゅっと詰まっていておいしい。

そして、この後、ビールから熱燗へチェンジ。厨房からチロリで燗をする様子が見えて、ちょっとうれしかった。お酒が楽しめるトンカツ屋さん、いい。そして、同時にお願いした真いかの丸干しにしびれた。旨みが凝縮されていてワタもおいしく、酒飲みに嫌いな人はいないでしょう、という味わいだ。熱燗(久保田百寿)とおいしくいただけたのは言うまでもない。

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 このあと焼酎を飲みながら、何を食べようか、迷った。が、彼氏は迷わず、カツ丼ということでわたしは、ヒレカツをいただくことに。え?ここに来てカツ丼じゃないの?と思われそうだけど、まだお酒が飲みたかったのだ、あと、カツ丼は彼氏に一口もらおう、という魂胆で、ヒレカツ定食に決意を固める。

ちなみに、「鈴新」ではごはんの量を、普通、ちょっと少な目、半分、かなり少な目、ほんのちょっと、と選べるようになっていてこれもポイントが高かった。お酒を楽しんだことだし、この日は半分でお願いした。

店内は、入れ替わり立ち代わりお客がやってくる。夫婦、男性の一人客、女性の一人客も。落ち着いた雰囲気で一人でも入りやすい店だ。お酒を飲んでる人はあまりいなかったけど、平日は会社帰りの人たちが仕事後の一杯を楽しんでいるのではないだろうか。

ヒレカツ定食は文句なしのおいしさだった。やわらかい歯ざわり、じゅわっと広がる肉汁、お肉に弾力もあって、楽しく食べられる。衣は全然しつこくない。つけあわせの漬物ももおいしいし、豚汁は、すごくあっさりしていてびっくりしたが、これも美味しい。

ちなみに、「鈴新」にはカツ丼三兄弟と名づけられた3つのカツ丼がある。通常のカツ丼「煮カツ丼」、ごはんにカツをのせ、卵でとじた玉ねぎを後載せする「かけかつ丼」、ごはん、きゃべつの上にソースカツ、そして大根おろしを載せた「そうすかつ重」だ。

彼が頼んだ「かけかつ丼」がやってきた。カツ丼はどんぶりからカツがはみ出ていて、気分が高まること必至。蓋をあけるとほやほやのカツと卵が。

う、おいしそう、次来たらこれ食べる、と心の中でつぶやき、彼に一口もらった。

ひと口食べると、あっさりやさしい味のカツ丼におどろく……。お肉はさっくり感が残っており、とんかつ自体を堪能することもできる。

ボリュームはそこそこあるが、厚すぎず薄すぎず。卵とじやごはんとのハーモニーを安心して楽しめる厚さ。どんぶりもごはんの量を選べるし、ボリューム命なカツ丼じゃないのが好印象。これなら女性でも無理せず完食できそうだし、店の居心地も抜群。

ああ、また来たい。またここでお酒を楽しみたい。そして、お酒と一緒に今まで興味のなかった、カツ丼を心ゆくまで堪能してみたい。ついでに言うと、三兄弟を制覇してみたい。カツ丼にこんなに興味が沸くなんて。痩せたいおなごにとっては禁断の、パンドラの箱を開けてしまったかもしれない。

 

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鈴新

営業時間:11:30~13:30/17:00~20:30(L.O.20:00)
定休日:日曜日、祝日
アクセス:東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅徒歩4分、都営地下鉄新宿線曙橋駅徒歩6分
住所:東京都新宿区荒木町10-28 十番館ビル1F

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