江戸グルメと酒と旅の話

旅行ライターやってます。昼飲み、ご当地グルメ、江戸グルメ・老舗、神社仏閣、旅の記録などをつづっています。

湘南台「元祖鴨南ばん本家」で江戸時代からの味を満喫【蕎麦前紀行】

神奈川県藤沢市にある鴨南ばんの元祖の店

以前から気になっていた「元祖鴨南ばん本家」へ行ってきた。店名の通り、なんでも鴨南ばんの元祖の店だという。

場所は、地下鉄・小田急相鉄線の「湘南台」駅から徒歩約3分。そんな店が地元(藤沢市よりの横浜市在住)にあったなんて!元祖って、どんな鴨南ばんが食べられるのだろう?とかなり期待しながら、店に到着。

到着したのは14時過ぎだったが、3連休のためか、そう広くない店内は、満席だったので、名前を書いて待つ。

創業200年あまりの老舗蕎麦屋

「元祖鴨南ばん本家」は江戸時代文化年間(1810年頃)、日本橋馬喰町の鞍掛橋で創業。初代が長崎の「南蛮煮」をもとに「鴨南ばん」を考案したところ、江戸中の評判となったそうだ。
明治の中頃から3代目が店名を「元祖鴨南ばん」とする。その後、関東大震災大正12年)の大火事で店は消失してしまうが、4代目が再興。
5代目の頃は、妻が「鴨せいろ」を考案し、各地に支店もできたため店名に本家をつけ、現在と同じ「元祖 鴨南ばん 本家」したそうだ。現在の店主は8代目。湘南台に移転したのは7代目の頃だというから、最近のことらしい。

メニューを見ながら待っていると、ほどなくして、店内の小上がりの席に案内された。

店は28席ほどでそう広くはない。建物は新しいようだが、老舗だけあって純和風のいかにも”蕎麦屋”な佇まいが守られている。

江戸っ子が絶賛した幻の食材「銀宝」の天ぷら

看板メニューはもちろん、鴨南ばんだが、一品料理も豊富だ。板わさや天ぷら、卵焼きなどの定番から、鴨の陶板焼き、鴨わさなんてものもある。

この日は、合鴨の陶板焼き(1000円)と小松菜のおひたし(450円)、そして、季節の限定メニュー、銀宝の天ぷら(800円)をお願いした。

なんてサラっと書いたけど、メニューを見た瞬間、銀宝、ギンポって何⁉と頭の中がはてなマークでいっぱいになったのであった。

何やら不思議は呼び名であるが、品書きには「江戸時代から『銀宝を食べずんば天ぷらを語ることなかれ』と言われ、現在では幻の食材になっています」とある。

これだけでは、さっぱりだが、隣のめごちの天ぷらの説明に、「砂底に住む魚、穴子や鱚(キス)、櫨(ハゼ)、銀宝と並んで代表的な江戸前の天種」とあるので、魚なのだろうということが想像がついた。

これは食べてみないわけにはいかないだろう。

さて、ビールで乾杯しつつ、蕎麦味噌と小松菜をつまんでいると、やってきたのは、合鴨の陶板焼き。

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鴨が肉厚!一口食べると、弾力のある肉からうま味がじゅわっと広がった。陶板焼きってタレの味が濃い印象があるんだけど、タレがあっさり目で、お肉の味がしっかり楽しめる。美味。そして、お肉ならやっぱり日本酒だ。ぬる燗が進んだ。

「銀宝」の味は?

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お次はお待ちかねの銀宝の天ぷらだ。

見た目は、白身魚?というより穴子のような感じだろうか。かぶりついてみると、うわ!穴子よりもっちり弾力の歯ごたえ。しかも、外の衣はサクサク、中はもっちり、と食感のゴールデンコンビだ。そして、穴子より白身の味わいがしっかりしている。

いやー美味しい。そりゃあ江戸っ子たちに、「銀宝を食べずんば天ぷらを語ることなかれ」とも言われるわな。その通りだわ。

今日の蕎麦前は、中身が濃い!すでに超楽しい。

(ちなみに、銀宝をネットで検索したら、名前の通り、不思議は見た目だった)

www.zukan-bouz.com

 

初代の味を再現した鴨南ばん

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が、〆は、やはり、鴨南ばん。

その名も「治兵衛の鴨南ばん」(1400円)だ。これはなんでも初代「笹屋治兵衛」が出していた「鴨南ばん」を再現したものだそう。こちらの蕎麦には、合鴨ではなく青森県産の本鴨、葱は江戸野菜である江戸千住葱を使用しているそう。

普通の鴨南ばん(950円)もあり、そちらは合鴨を使用。そちらでも十分美味しいのだろうけど、初来店なので、ぜひ初代の味を!と思い、治兵衛の蕎麦を頼んだ。
運ばれたきた蕎麦には「鴨」と書かれた漆塗りの蓋が。そして、蓋を開くと、これまたボリュームたっぷりだ。

肉厚の鴨肉がどーんと器に盛られている。しかも、骨付き肉まで。気になる味は、これは、今まで食べた鴨肉の中でもやはりダントツに美味しい。より身がしまっていて、味が濃い。お蕎麦はこしがある。ネギも味が濃い。しかも、ほのかに肉がついた骨付まで入っていた。

肉にかぶりつきつつ、蕎麦が伸びぬようにと蕎麦をほおばる。もごもごと口いっぱいに、鴨さんのうま味と蕎麦を堪能する。だが、特筆すべき点はそれだけではない。

そう、汁だ。

一般的に鴨南ばんの汁って、甘くてちょっと濃いめ、が多いけど、ここのは、鴨の出汁を全面に出しているためか、また、鴨肉じたいを味わえるように配慮されているのか、とてもあっさりしていて、上品な味わいだった。それでも、うま味が凝縮されたその風味は、物足りないということもなく、極めてバランスがよい。すべて飲み干してしまった。満腹……。

湘南台で江戸の味を堪能できるなんて。貴重な店。ぜひまた足を運びたい。昼下がりの蕎麦前をたっぷり満喫できました。

 

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[元祖鴨南ばん本家]
営業時間:11:00~20:30
定休日:木曜日
TEL:0466-45-5033
住所:神奈川県藤沢市湘南台2-22-17
アクセス:湘南台駅出口Dから徒歩2、3分

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