まったり昼飲みするのにもぴったり。蕎麦屋酒の魅力
気が付いたら、好きになっていた蕎麦屋酒。
もともと蕎麦は嫌いじゃなかったし、彼氏ができて昼飲みすることが増え(3年以上前だけど)、近所の名店に行ってみたら料理も店の佇まいも器もジャパニーズビューティでしびれたり、神田まつやの江戸庶民的な雰囲気に胸を打たれたりして、だんだん蕎麦屋に足を運ぶことが増えて、気が付いたらものすごく好きになっていた。
一人ですっと入って酒も飲めるようになった。まぁもう中年まであと一歩というところだから、それくらい楽勝だよなぁと、いつのまにかまあまあな歳を重ねていたことを自覚する。
まぁ、「蕎麦屋で酒を飲んだことなんて一度もない」という人にとってはちょっと敷居が高いかもしれないけど。そんな人のために蕎麦屋酒の魅力をちょっと紹介してみよう。
ちなみに、蕎麦屋酒に特別なルールや決まりはない。常識の範囲で好きなように食べて、飲んでオッケー。
蕎麦屋酒の魅力①昼飲みしやすい&ひとり飲みしやすい
先日入った、とある蕎麦屋で品のある年配女性が昼酒を楽しんでいた。
そんな風景も蕎麦屋ならではだ。
思えば、蕎麦屋ほど女一人飲みに適した場所はないんじゃないかという気がする。
居酒屋や立ち飲み屋も一人客を歓迎してはいるものの、やっぱり入りづらい。初めての店はかなりの勇気を要する。外食チェーンでちょい飲みもできるが、それじゃなんだか味気ない。
バーはいくらか入りやすいが、やはり知らない店へ行くのは勇気がいるし、周りの客や店員によって居心地はかなり左右されるし、店の雰囲気も多様なので好みの店に入れるとは限らない。言ってみれば当たり外れが大きい。それから基本的に昼からは飲めない。
でも蕎麦屋なら、誰でもひとりでスッと入れる。店員さんとも周りのお客とも適度な距離感があって、ひとりで行っても落ち着ける。
早い時間から飲んでさっと帰って、カフェにでも行くような足取りで爽やかに帰れる。バーみたいについ飲み過ぎて……なんてこともない。
もちろん、気の置けない人と昼からまったりお酒を飲むのもなんとも幸福な時間だ。
蕎麦屋酒の魅力②蕎麦屋ならではの酒肴×日本酒が最高
ビール好きの私だが、蕎麦屋に来たらやっぱり日本酒。最初の1杯はビールかなとグラスを片手にしながらも、つまみを頼んだらもう、早く日本酒が飲みたくてそわそわしてしまう。
蕎麦屋と酒がセットなのには、理由がある。
江戸時代、蕎麦は作り置きをせず、客の注文を受けてから蕎麦を打ち始めて提供していた。当然時間がかかる。そこで客は蕎麦が出来上がるまでの時間に酒や種物(温かい蕎麦の具)に使われる食材を使った酒肴を楽しみながら蕎麦を待つのが一般的だった。これが「蕎麦前」と呼ばれていた。
蕎麦屋に欠かせない酒肴といえば、まずは蕎麦味噌。
蕎麦味噌とは、砂糖、みりん、酒などで伸ばした味噌に、煎った蕎麦の実を加え、七味や白ごまなどで味を整えたもの。甘辛い味噌に蕎麦の実の香ばしさと食感があり、とにかく日本酒が欲しくなる一品。
お店によっては、しゃもじの上に伸ばして焼いたものだったり、山椒がきいたちょっぴりスパイシーなものだったりさまざま。もっとも店の個性が現れる酒肴の1つだと思う。
また、ちょっと変わっているのが、天ぷら蕎麦や鴨南蛮など温かい蕎麦から、蕎麦だけをぬいた、「ぬき」という一品。天ぬきなら、たぷたぷに汁を吸った天ぷらがもう、なんともいえぬ味わい。そして汁じたいも日本酒のお供として最高。
その他に、卵焼き、焼き鳥(蕎麦に使う調味料を使った特製のタレで提供している店がほとんど)、とりわさ(軽く火を通した鶏肉をわさび醤油などで和えたもの)、板わさ(かまごこと山葵)、焼きのり、とろろ、鴨焼き、天ぷらなどが定番。店によっては旬の素材を使った一品料理を多くそろえているところも。
酒肴はあっさりしたものから始めて、次に、ぬきや焼き鳥、卵焼きなど脂がのった料理の順に頼むのがいい。また、個人的には、日本酒はうま味が引き立つ熱燗やぬる燗がおすすめだ。酒肴とのハーモニーは格段にアップする。
〆はもちろんお好きな蕎麦でどうぞ。
蕎麦屋酒の魅力④江戸ワールドへトリップ!
私が蕎麦屋好きな大きな理由の1つが、これ。江戸世界にトリップしたかのような時間を過ごせること。もちろん、すべての店というわけではないのだけど、特に老舗はかなり独特の雰囲気があり、建物が需要文化財だったり、店内に古くからの調度品が飾られていたり、タイムスリップしたような非日常感を味わえる。
純和風の佇まいが好きで、首都圏では特にだけど、イタリアンやおしゃれカフェで溢れ日本なのに日本らしさを感じる店が劇的に少ないということを誰も疑問に思わないのが不思議で仕方ない私にとっては、日本に帰れる蕎麦屋はちょっとしたオアシス的な存在だ。
そんな空間で盃を片手に蕎麦すする。ときどきふっと、ほんの一瞬、江戸時代の人もこんな風に酒と酒肴と蕎麦を楽しんだのだろうなと、想いを馳せながら、彼らが残してくれた文化で胸をいっぱいにして、店を後にするのだ。
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