旅、お酒、浮世絵のはなし

日本のお酒・グルメ、伝統文化などに焦点をあてた紀行文やお出かけ情報をつづります。よく行くスポットは鎌倉、逗子、東京の下町など。

「両國」のうな重を食べて泣きそうになる

両国駅から徒歩数分のうなぎや「両國」の鰻。たぶん、私なんかが、味付けに対してあれこれ言う資格などないほどの逸品なのだと思う。文句なしにおいしい鰻だった。だから細かいうんちくは、おいておく。

でも、一口食べた瞬間に思ったことが忘れられない。

「なんで……?やさしい味がする……」

あぶらののった鰻がふっっっわふわなのも「やさしい味」の一因に違いないのだろうけど、そういう言葉で表現できるものを超越している何かが宿っているような鰻重だった。

たしかにさ、たまーにさ、ものすごくお腹が減っているときに炊き立てのごはんを食べて泣きそうになる、なんてことが、なくはない。それの類かと思い、「やさしい味」の正体を見つけるべく続けて箸を進める。慎重に。

「うぅ、さっきよりやさしい味がする……ふわふわだし」

なんだかもう、食べれば食べるほど、胸がいっぱいになってきて、ますます泣きそうになってしまう。やさしい味の正体は分からない。

私は再び、やさしい味の正体をさぐるべく、どこかにそのヒントはないかと、今度は、うなぎを焼くオヤジさんを見つめてみた。でも、意外にポーカーフェイス。笑みや愛想を浮かべるわけでもなく、かといって、職人気質のガンコオヤジの真剣なまなざし、とかでもなく、なんか、近所のコンビニで買い物してるオヤジさんのような……(注:焼いてる最中は違うかもしれません)。

それだけ、鰻を扱うことが、日常のことになっているんだろう。ひょっとしたら、そんなリラックスした?彼の姿勢が鰻に乗り移ってる?思わず肩の力が抜けるような、ほっとする味。

結局その真相ははっきりとわからないけど……。

ポーカーフェイスから生まれる、やさしい味がする鰻重。そのコントラストを楽しみながら、私は最後まで、泣きそうになりながら、うな重を完食した。たぶん、誰にも見られないところで、ひとりで食べてたら泣いていたと思う。元気がないときに行ったら心まで元気にしてくれそうな鰻だと思った。

tabelog.com