旅、お酒、浮世絵のはなし

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あべのハルカス美術館の「北斎ー富士を超えてー」で感涙

お酒のことばかり書いてるわたしだが、1年ほど前より浮世絵日本美術好きでちょくちょく足を運んでいる。 今日は北斎の展覧会に行った感想。

葛飾北斎の展覧会「北斎ー富士を超えてー」

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大阪、あべのハルカス美術館で開催中の葛飾北斎の展覧会「北斎ー富士を超えてー」に行ってきた。

19歳から絵師を志し90歳に没するまで、その間なんと約70年も画業に邁進し続けた絵師である。

その名は世界的にも知られているが、さまざまな富士を描いた「富嶽三十六景」をはじめとした浮世絵版画のイメージが強い北斎。しかし、風景画のほか、江戸の女性を描いた美人画春画花鳥画、神仏を描いた絵や、身近なあらゆるモノを描いた絵手本「北斎漫画」、そして、版画だけでなく肉筆画も多く残っており、その作品の多彩さには驚く。以前に墨田区北斎美術館でそれらを見て「なんでも書ける天才じゃ!」と強く思ったことを覚えている。

そんな北斎の今回の展覧会は晩年30年の作品に焦点をあてたもので、肉筆画が多く展示されるのが特徴。また、小布施へ赴いたときに残された貴重な作品や没する直前の作品がおよそ200点、展示されている。

■やっぱり混んでいる……

10月15日(土)、11半頃に向かうとすでに入場券を買う行列ができていた。前売り券があったので、ここでは並ばずに済んだのだが、いざ中へ入ってみると混んでいて、どの作品の前にも人だかりでちょっと圧倒されてしまった。たださすがに途中で入場制限がかかったようで、中盤頃から1つの作品を見るまでに数分かかってしまうような状態は解消されていた。いや、もっと早くかけて、入場制限、と思ったが。とにかく大盛況で浮世絵好きとしてはうれしい限り。まぁ、世界一有名な浮世絵師なわけで、当然と言っちゃ当然なのだが。これが東京だったらもっと混んでいたんだろうな。

展覧会は、数といい内容といい、とにかく見応えあり。そして、版画でも肉筆画でも、風景画だろうが美人画だろうが、とにかくその表現力には誰もが感心していた。版画にしたって、構図も色合いも芸術品として完成度が高いのはもちろん現代人がみてもセンスがあっておしゃれで。これ作ったときおじいさんでしょ!?センスよすぎなんですけど、みたいな。

■圧倒的なエネルギーを感じる晩年の肉筆画

ただし、この展覧会のクライマックスはやはり終盤にある。

80歳を超えた北斎が信州小布施を訪れた際に(江戸から歩いて行ったそうな!)、祭り屋台の天井絵として描かれた対の作品「涛図」には、ただ波を表しているだけなのに、わたしの涙腺が反応。吸い込まれるような迫力があるのに、心に静寂を運んでくれるようなずっと観ていたくなる作品だった。これは驚くことに86歳の作品。ただし、晩年に近づくにつれて、最終章の展示テーマ「神の領域」の通りの肉筆画がわんさか……。

そのパワーに圧倒されて、久々に絵画を見て、涙が止まらなくなってしまった。

「狐狸図」は僧侶に化けた狐が描かれているのだが、風にふかれ佇む狐の姿にカラダこと釘付けに。どことなく哀愁がただよっている不思議な絵だった。

李白観瀑図」は中国の詩人とともに、巨大な滝を描いた絵。シンプルな構図にもかかわらず、この絵にもものすごいパワーを感じてならなかった。

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そしてこの図録の表紙にもなっている「雪中虎図」は微笑んでいるかたのような虎が雪の中を飛ぶように走っている絵。こちらは個人的に1番感動した1枚。なんだろう、まるで天国に向かってはしているかのように見える。うれしそうで、でも凛々しい表情の虎。たぶん、人目を気にせずに見ていたら、号泣していただろうと思う。

これらの絵をみて不思議に思うのは、何がいいのか?と聞かれても全然わらかないし涙の理由を説明することができないところ。それでも、心にぐっとせまる圧倒的なエネルギーを感じる。北斎は真の実力は肉筆画にあるといわれている所以を肌で知ることができた展覧会だった。