旅、お酒、浮世絵のはなし

日本のお酒・グルメ、伝統文化などに焦点をあてた紀行文やお出かけ情報をつづります。よく行くスポットは鎌倉、逗子、東京の下町など。

【阪東橋・伊勢佐木町】おじさんたちの聖地「中華料理一番」で感じるフリーダム

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阪東橋・伊勢佐木町「中華一番本店」で昼飲みの幸せを噛みしめる

近所の店に行く気分じゃないときに足を運ぶのが伊勢佐木町界隈だ。

食事したいときも、お酒を飲みたいときも、最寄り駅ではほとんど見かけないエスニックを食べたいときにも、伊勢佐木町周辺に行けばだいたい欲望は満たされる。

なので「中華料理 一番本店」は、ちょこちょこ前を通りがかったことがあり、気になっていた店。女子には似つかわしい、年季の入った中華料理店。おせじにもキレイとはいえず、ある種の女性には見向きもされないことだろう。そして、ある昼どきに、とくに食べたいものがなくうろうろしてたどり着き、満を持して入店することに。

店に入ると「ああ、人気店の活気だ」と思った。

広めの店内。店員さんの元気がよくて、お客さんはうるさすぎず、静かすぎず、そんなお客と店員の会話はとても自然。サービスではなく人と人との会話が聞こえてくる、みたいな店。ちなみに、活気があるのにうるさくない店は、結構な確率で天井が高く、多少まわりの客が騒いでも騒音にならないけどのこの店もそんな感じ。

中華のメニューはひととおり揃っていて、酒飲みにはうれしいハーフサイズの料理もある。

でも、料理よりも先に客が気になった。

まず、ほぼ満席の1階フロアを見渡すと、飲酒率の高さに驚く。12時前なのに、8割くらいの人が酒を飲んでいる印象。

そして、今日は日曜の昼だけど、きっと平日の昼も来ているんだろうな、と思わせる「白髪交じりの無造作ヘアに、グレーのジャンパーを着ているおっさん中のおっさん」みたいなおじさんだらけ!

そう、ここはまぎれもいおじさんたちの聖地だった。

メニューにあったっけ?と思う納豆をつまみにボトル焼酎を楽しむおじさん。「今日も青りんごサワーね!青りんごサワーひとつ!」、青りんごサワーがお気に入りのおじさん。テレビが見たいのに、テレビが見える方向の席が空いていなくて、空いたと思ったら後から入ってきた客に先をこされてさみしそうにしているおじさん。

おじさんたちのささやかだけどきっと大きな日常をしめている幸せが「中華料理一番本店」にはあった。

おじさんだったら、常連になっちゃうよなぁと思いながら、瓶ビールを飲みながら、チンジャオロースやらきくらげの炒め物やらをつつく。(おじさんじゃないけど近所だったら常連になる可能性は高いのだが)

内装は、年期が入っていて、昭和の喫茶店と食堂の中間のようなインテリア。店員さんは中華圏出身とおぼしき女性が多く、親しみやすい。かつ彼女たちのおかげか、異国の地に来たような雰囲気があるのもいい。

料理は、めちゃくちゃおいしい、というわけではないが、チンジャオロースはピーマンがすごくたくさん入っていて気に入った。

でも、しゅうまいは、口に入れた瞬間、「水分ほしい」と思った。異様にぱさぱさしていて印象的。思いだして笑えたのでよし。

他、メニューを見て心にささったのが、焼酎の小ボトルが1,080円からあること。なんとコスパがいいことよ。この店がある限り、お酒好きなおじさんたちの幸せは保たれるであろう。

店を訪れたときは、ブログに残すつもりもなく、写真も撮らず、ただおじさんを観察しながら酒を飲んでいた。なのに、なぜか日に日に、絵にかいたような?理想の?おじさんの聖地を目の当たりにしたことを、文章として残さなくては!という使命感のようなものまで感じるように……。それぐらい印象に残った。

「きっと、朝起きて、昼前に来て、新聞とかテレビとか見ながら、飲んで食べてゆっくりして、んで、家帰って昼寝するんだろうね」

おじさんたちを見ての彼氏の言葉に激しく同意。

自分が働いている身分だということを忘れさせてくれる、フリーダムなおじさんの日常を感じることができる店だ。

 中華料理一番 本店

大正創業。浅草のおでん屋「丸太ごうし」。絶対食べたいオススメメニュー

浅草のおでん屋「丸太ごうし」

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寒い日が続いていて、好物の冷えたビールすら受けつけない日もあるほど。

外出も控えたい気分であったが、そんななか自宅から1時間かけて向かったのは浅草の「丸太ごうし」。大正15年創業のおでんの老舗だ。扉を開くと、おでんの香りがたまらない!懐かしいにおい。

土曜日ということもあり、念のため予約をしておいた。ご主人に奥の座敷の席へ案内される。

すかさずビールをオーダーすると、すぐに前菜が出てきた。

丸太ごうしでは席だけの予約は不可。前菜、お刺身盛り合わせ、おでんのセット料理の予約が必要だ。

やってきた前菜が並ぶ皿を見て、テンションがあがる。

煮こごりがある……!出汁がさわやかに香り、口のなかでゼラチンがすっーととろけていく煮こごり。前回来店時には、その美味しさにすっかり虜になってしまったのだ。

その煮凝りと再会。ワクワクしながら、口に運ぶと、ふわりといい香りの後にやさしくとろける口当たりは、もちろんそのまま。たまらないわ。

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のちのち、隣の客もその隣の客も煮凝りをオーダーしていて、やっぱり人気商品なのだなとうれしくなった。しかも単品だと250円という安さ。

煮こごり以外には、菜の花のお浸し、漬物、クルミの佃煮、いんげんの梅肉和えなど。酒の肴にぴったりの料理はどれも美味。

前菜をつつきながら、これはもう、日本酒。剣菱という日本酒を飲んでみたかったので熱燗をオーダーし飲んでいると、刺身の盛り合わせもやってきた。

そして、またテンションが上がる。タコがいる……!肉厚に切られた弾力があり、噛めば噛むほど旨みが出てくるタコ。前回来店時には、その美味しさにすっかり虜になってしまったのだ。

さっそく、かぶりつきました。肉厚なので口いっぱいに旨みとタコ汁?が広がる。幸せ。しかも、素晴らしく日本酒と合うではないか。辛口で残り香が豊かな剣菱とのやみつきになるマリア―ジュであった。

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刺身は、アジ、カツオ、いか、しめさば。どれもおいしい。しかも、ボリュームたっぷりで大満足だ。

熱燗をおかわりし、いよいよおでんがやってきた。

出汁のいい香りがふわり。まずはやっぱり大根から。厚さは数センチ以上の大きめの大根は、箸をいれると、一瞬ふわっとするくらい煮込まれている。はふはふしながら熱々をいただく。ほろほろとろける。優しい味わいで、これまたお酒がすすむすすむ。

他、じゃがいも、いか巻き、牛すじ、こんぶ、しらたき、などが入っていた。

どれもおいしいのだけど、大根の他は、じゃがいも甘味があり素材の味が十分に感じられて美味。しらたきは細めで出汁がしっかり染みていた。

盛り合わせにはなかった、味が染みていてスモーキーさすら感じたまごと、しらたきや鶏肉がつまったふくろ、そして大根も再びオーダーして、〆。お腹いっぱい。

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店内は、黒電に、明るすぎない照明、年季の入った家具。畳の座敷があり、昭和一色!お客は年齢層も高めで、落ち着く雰囲気。デートにもいいんじゃないかな。

煮こごり、タコ、大根、絶対食べてほしい!

丸太ごうし

食べログ丸太ごうし

 

牛ハラミ焼きとわさびの絡み合いに悶絶。逗子の老舗居酒屋「つく志」

逗子駅すぐ。昔ながらの居酒屋「つく志」へ

最近、逗子にハマっている。

3週連続で、逗子海岸、葉山、一色海岸あたりをブラブラした。

隣の駅の鎌倉より人は少なく、もう少し田舎っぽい。海が近い。一色海岸が美しすぎる。個性的でセンスのよい飲食店が多い。のんびりと過ごしたい休日にぴったりなのだ。

逗子駅から徒歩2,3分の「つく志」に立ち寄ったのも、夏がおわりしっとりした一色海岸の景色を満喫した週末だった。

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見るからにほろ酔いのおじさんたちで賑わっていそうな佇まい。扉に近づいてみると、たくさんのお客さんの楽しそうな雰囲気だ。

「入ってみよう」

彼氏と意見が一致したので、迷わず扉を開ける。

カウンター席とテーブル席が並ぶ1階は満席らしく、2Fへ案内される。2Fは座敷だ。2日間遊んだ締めくくりの食事。畳はじんわりうれしかった。田舎のおばあちゃんの家みたいで落ち着くし。

2Fはおじさんたちの笑い声が絶えないけど、まぁ、これくらいのにぎやかさはご愛敬。

瓶ビールをオーダーして、メニューを眺める。

さんまの塩焼き、マグロ納豆、タコ刺、アジフライ、しらすおろし、マグロぶつ。ダメだ。どれも魅力的……。でも、今日はどうしてもお米が食べたいのだ。ほどほどにしなくてはお米が入らなくなっていまう。どうしよう、本気で悩む。本当は全部食べたい。

まずは、彼がお新香とちぐち串(喉の奥のお肉だそうです)を、わたしはタコ刺をチョイス。

タコはきゅっと身がしまっていて、味が濃い。ぬか漬けはちょうどよい塩かげんで美味しい。ちぐちも、たぶんはじめて食べたがジューシーでびっくりした。

やっぱり、お酒を飲むのは和風の居酒屋が楽しいな。素朴なだけど美味しくて手頃なメニューが揃うこんなお店はどうかいつまでも残っていてほしいものだ。

お酒も進む中、今日忘れてはいけないのが、真っ白なごはん。そろそろオーダーしたくなってきたが、ここでまた何を頼むか迷う。ごはんのお供にふさわしいものを二人で真剣に相談。

さんまの塩焼きにもそそられたが、昨日さんま食べたじゃんと彼。煮つけであったが確かに、と私。

討論の末、選ばれたのは……アジフライだ。でもその前に、もう少しお酒を楽しもうとマグロブツ切を先にオーダー。

しばしビールと三崎で獲れたまぐろを満喫した。

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そしていよいよ、アジフライとごはんが登場。家庭の味っぽいのになかなか家では食べる機会がない、アジフライ。

待ち切れず一口かじると、サクサクのフライに閉じ込められた味がじゅわっと広がる。

おいしい。

一口、サクッとかぶりつく度に、アジフライをじっくり噛みしめたい気持ちとごはんとのマリアージュを楽しみたい気持ちの間でゆれうごく。アジフライだけ味わったり、ごはんと頬張ったり、途中からごはんを参入させたり、残っているマグロぶつとごはんを食べたり、すっかり夢中になって食べた。

あー美味しかった。

でも、これで終わりではないのだ。隣の席のおじさまたちが食べていた牛ハラミが気になって気になって仕方がなかったわたしは、彼にその旨を告げていた。

そして、お腹に余裕があったら食べようと2人で誓いを交わしていたのだ。

今回、最後にその「牛ハラミ焼き」の美味しさに悶絶した。

肉汁じゅわっ!

心から頼んで良かったと思う。有名な焼き肉店よりおいしい、と彼。そして、お皿にあるからしをみてこう言った。

「わさびつけても美味しそうだよね」

そこで試しにマグロの残りのわさびをつけてみると、もうどう表現すればいいのかわからない、ちょっと投げやりになるくらい美味しいではないか。ほんのり甘味のあるタレと肉汁と、わさびが上手に混ざり合ってくれるのだ。

と、彼が、すかさず店員さんにわさびをもらう。

好きなだけわさびを付けて堪能した。

おじさんたちのテーブルを見て肉に目をつけたわたしに、なかなか目ざといね、と彼。褒められているような恥ずかしいような……。でも、美味しかったから何はともあれ大満足。ぜひまた足を運びたい店だ。

ちなみに、後日お店のホームページを見たところ、創業は昭和26年。昔ながらの味と新鮮な食材が楽しめる店なのだ。

つく志

食べログつく志

 

創業以来のぬか床でつくられる「香の物」にしびれる。横浜・伊勢佐木町の元祖釜飯や「お可免(おかめ)」

f:id:mamiwa02:20160725013935j:image完全恋人チョイス、ほぼ事前情報なしで釜飯が食べられるという、横浜・伊勢佐木町の居酒屋「お可免(おかめ)」に向かった。 

途中、地元の人らしきおじいさんに道を尋ねると、「ああ、おかめね」といって、しゃきしゃきと道順を教えてくれた。地元では有名らしい。

店の前に到着し、その佇まいを一目みるなり、納得。年季が入った佇まいは「ザ・老舗」である。

まずいワケがないわ、という、外観だけでもテンションが上がってしまう佇まいだ。

いよいよドアを開けると、そこは……まるで『男はつらいよ』の寅さんがお酒飲んでそうな、昭和の日本の店だった。店内はテーブル席と座敷席が半々くらい。合計40席程度で比較的広々している。

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座敷に通され、低めのテーブルにを目の前に座り、ほっとひと息、ついたところで「わー!」と半オープンキッチン(?)スタイルに感動。

座敷席の壁一面の3分の2ほどの大きさで、厨房が見られるように開けている。

開放感、ちょっとしたライブ感、お店の人の顔がいつでも見られる安心感、映画の中の世界を覗いているようなわくわく感!である。

元祖釜飯「お可免(おかめ)」昭和2年(1927年)創業とのこと。創業者である先代は当時は珍しい女性の料理人。試行錯誤の末、釜飯料理を考案し以来89年その味は守られているそうです。

ビールとお通しを味わいながら、迷った末、馬刺しとタコ刺しをオーダー。馬刺しとタコ刺しはどちらもちゃーんと味がして、これは日本酒だわと、すっきり辛口のお酒頼みました。あー日本人でよかった。

f:id:mamiwa02:20160725014009j:image追加で、香の物を頼んだところ、これが大当たり!(恋人チョイスだか)。なんでも創業以来のぬかに継ぎ足してつくられているぬか漬けだそうで。それはそれは芳醇なぬか漬け。

全然詳しくないのだけど、よきヴィンテージワインとか飲んだときと同じ感動ではなかろうか。

ふわーと口の中に広がる、ぬか=菌。ずっと噛んでたい。再び、激しく日本人でよかったと思った瞬間だった。

そのあとは、穴子の釜飯で〆。美味しいかったです。ほんわかだしと穴子の旨味。味噌汁がついてくるのも地味にうれしい。

お店の雰囲気はアットホームでくつろげました。日本酒もたくさん揃っていたよ。すっきり辛口が多いような?気がしました。

江戸からの老舗「伊豆栄」で女ひとりで鰻を食べたい

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上野の鰻やさんへ行った。

伊豆栄は、江戸の中期創業の鰻割烹の老舗だ。

不忍の池の目の前にある、昭和59年に建て替えられたという店。入店すると案内されたのは、7F!そんなに大きいのか!

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広々とした空間。窓際は不忍池が望める。天井は高く昭和っぽいシャンデリア。いや、全体的に昭和感が漂っているのだけど。

ウェイトレスさんは、女性は着物をお召しで、中にはいったい何年こちらでお勤めで……?と思うような年配とおぼしき方もいます。でも、そんな方々が、老舗らしい店の雰囲気を格上げしているようにも見える。

老舗によくある、ふっくらした上質なおしぼりで手を拭きながら、メニューを眺める。

鰻重の松、竹、梅の他、一品料理は、野菜煮、天ぷら、季節の野菜などなど……。そしてコース料理。「鰻割烹」というだけあって、豊富な品が揃う。お酒も、ビール、冷酒、焼酎のほかワイン、ウィスキーとひととおり揃っていた。

ビールと、フルーツトマトやエシャロット、とうもろこし、谷中生姜、里芋、きゅうりなど季節の野菜の盛り合わせをオーダー。

恋人と昼から散々飲んでいた休日の疲れを癒すべく、美しい野菜と、ビールで(結局飲んでる!)ゆったりした時間を過ごす。

この伊豆栄、まったりくつろげる店でもあるのだ。

鰻やといえば、少しかしこまった雰囲気か、お重に集中して食べたらさっと帰なければいけない、そんなイメージだけど、ここはまるで読書でもできそうな雰囲気なのです。

時刻は、20時頃。夕食どきともいえるこの時間にもかかわらず女性のひとり客がチラホラ。店が広いので、ひとり客でも4人がけテーブルでくつろげます。

いいな、うなぎおひとりさま。

私もいつかやりたい。

そう思いながら、気が付いたら、恋人そっちのけでうな重に夢中になっていた。

お酒を飲んだ1日の〆にもやさしく、さらっと食べられてしまう鰻。

香ばしく、ほんわりして、しつこくない。

あとで知ったのですが、伊豆栄の鰻はタレに砂糖を一切使用していないのだとか。

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鰻はもちろん、老舗らしい優雅が空気と昭和っぽいお店の雰囲気が好きでした。いつかひとりで来られるかな。

 

 

歯ごたえ、旨み、ハンパない!江ノ島「食堂いのうえ」で巨大「サザエのつぼ焼」体験

 

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夏になると取り敢えず足を運ばずにられないのが、江ノ島

なんて言いながらも、江の島駅周辺に来ることはあっても、実際に江ノ島を観光したり散策したりといった経験をした記憶がなく……。

今回は念願かなって丸一日遊んできた。江ノ島弁天橋をわたり、いざ江ノ島。橋を渡るとすぐに、「ザ・日本の観光地」なお土産やさんや飲食店が並んでいる様子に浮足立つ。

そして、B級グルメや食べ歩きフードもいたるところにある。特に、海鮮を焼く香ばしい醤油の香りには、到着早々、ビール欲を駆り立てられる。

が、しかし、昼酒をゆっくり味わうために、とりあえず我慢。生シラスとか、ご当地グルメが楽しめて、ゆっくりお酒が飲めて、味わい深い佇まいのよき店を目当てに歩いた。そして、同行者のあの辺に店が何件かあった気がする…といううっすらとした記憶と、最後はカンで選んでたどり着いたお店が大当たり!

その名も「食堂いのうえ」だ。

「食堂いのうえ」は、新鮮な魚介類がウリの昔ながらの雰囲気が漂う小さな食堂。

まずは、やっぱり、生シラス(しょうが醤油で)。そして、瓶ビールをオーダー。昼からのこの組み合わせは、お酒好きにとってはもう、天国。仕事が忙しくて週末が待ち遠しかっただけに、言葉にならないくらいの至福の瞬間であった。

が、この後、この幸せが絶頂を迎えることを私はまだ知らなかった。

それはなんの飾りもなく、目の前に置かれた。「サザエのつぼ焼き」だ。とにかく、まず目の前に置かれると、巨大なことに驚く! 

一瞬、え?と思った後に気が付く、大きいー!と。

おいしいエキスたっぷりの液体の中に隠れているサザエ。取り出してみると、奥までシュポッっと出てきた。高まる気持ちを抑えきれず、一口食べてみると、歯ごたえが半端ない!そして、噛めば噛むほど、磯の旨み!本当に、いま思い出すだけでも興奮してくる衝撃体験であった。

このあと、煮魚もオーダーする。家ではなかなかできないな、と思うほど味がしっかりしていて美味であった。

ちなみにいのうえはどのメニューも定食は1000円前後、サザエは700円〜900円。単品も数百円〜と良心的な値段。

テンションはあがりっぱなしでビールが進んだ昼酒であった。

いのうえに来るためだけに、江ノ島、また来ちゃう――。本気でそう思う店だった。この後、観光したことも、念のため書いておく……。

 

食堂いのうえ

 

横浜中華街「聘珍樓」で味わった甘め梅ソースの鴨ローストとシャンパンの芳香

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グルメ通の人たちには、大きな声で言えないけど、生まれて初めて横浜中華街にある老舗「聘珍樓」に行った。と、メニューも開かないうちからまた来たいお店リストにランクイン。

明るすぎず暗すぎず、落ち着く、というか、ちょっぴり妖艶な雰囲気すらする照明の中で、分厚いクロスが掛けられた丸テーブルと円形のソファ席につく。店内で、マネキンが笑みを浮かべたような黒いスーツのウェイターたちが姿勢よく動いている風景は、映画の中に飛び込んだかのようだった。

お客は、カジュアルな装いの30代らしきふつうのカップルもいるけれど、品よく白いハットを身に着けている老婦人と旦那様、とか、又吉か!?って一瞬思っちゃったおひとりさまの30代後半と思われるロンゲ(死語!?)男性とかを見ると、やっぱり、普通のレストランとは違う客層の濃さ。映画の登場人物さながらのキャラなのだ。

料理が来る前からそんな風景を眺めているだけで、十分楽しい。楽しすぎる。

できれば、又吉風のあのロンゲさんのみたいに、一人で来て本を片手にワインを飲みながら、こっそりお客を眺めていたい、と思ったが、うーん、まだ金銭的にもその他の意味でも不文相応な気がする。

でも、彼、そんなに私と年齢は変わらなそうだった。どんな仕事をしている人なんだろ。ビールを飲みながら思っていた。

そんななか最初の料理がテ―ブルへ。

どんなにおいしいだろう、期待が高まり過ぎていたのか、とりあえずオーダーした小籠包と焼き餃子は、意外と可もなく不可もない味だった。一緒に並んだ青菜炒めは、しっかり味つけされているけどしつこくない、しょっぱくもなく、あっという間にお皿がカラになった。

一息ついたところで、年上の恋人が2杯目のビールを飲みながら、また、いつものように昔話を始めた。10年くらい前の話。

数歳年上の女性のいとこと、聘珍樓に来たときのこと。

大学教授をしている、いとこは、40歳を迎えたばかりだったそうで、恋人に、結婚したい、自分の遺伝子を残したいけど相手がいない、そんなありきたりとえいばありきたり、なんだけど本人にとってはきっと真剣な悩みを打ち明けたそうだ。

別段仲が良いわけではなかったので、そんなことを相談されて、少し驚いた、と恋人。

その話、30歳半ばの彼女の前でするか、とちょっと思ったけど、そんな自分のことはそっちのけで、「自分の遺伝子を残したい」というセリフと「聘珍樓」は妙にマッチすると思った。

ちょっぴり妖艶な雰囲気に加えて、中華というのがいいのか。和食を食べながら聞くのは重い。イタリアンでは軽い気がする。ま、でも大衆的な中華じゃ雑音にかき消されるが。フレンチは?フレンチもいいかも。でも、コースだと料理が決まってるから、沈黙が起きたらごまかせない。

そのあと、香りだけで酔いそうなくらいうっとりする芳香のシャンパンを皮切りに、わたしたちにおいしい幸せな時間が嵐のようにやってきた。

こんがり焼けた鴨肉のローストを、すごいボリューム!(甘めの梅ソースがシャンパンに合う!)と思いながら、完食し、海鮮チャーハンのスープがけも完食。今回はどれも期待を上回ってくれる味。

ちなみにいとこは、残念ながら遺伝子は残せなかったそうだが、何年か後にはめでたく結婚されたそうだ。

 

横浜聘珍樓